銀行員になる為に特別な資格は必要ありません。しかし銀行員になると、資格試験との闘いの日々が始まります。
合格しないと銀行員としての基本的な業務さえできないものや、合否が昇格や出世に大きく関わるものもあります。私もメガバンク勤務時代、いくつ資格を取得したか数え切れません。
ここでは、銀行員が取得必須の資格と取得すると有利な資格について、経験も交えて紹介します。
これから銀行員を目指す人は、先に資格を取得しておくと就職活動で役立ちますので是非ご参考ください。
先に結論
- 入行前〜1年目:証券外務員(一種)と生命保険・損害保険募集人。この2つがないと窓口・渉外の基本業務ができない
- 1〜3年目:銀行業務検定(法務・財務・税務の3級→2級)と内部管理責任者、FP2級。銀行業務検定は法務3級だけで1回の試験に約5,000人が受験する「若手の通過儀礼」(2024年10月)
- 3年目以降:担当領域に合わせてFP1級/CFP・プライベートバンカー・証券アナリスト・簿記・宅建・診断士へ
- 昇格要件は行によって異なり、公式に「◯◯必須」と公表している行はほぼありませんが、銀行業務検定の特定科目・内部管理責任者・FP2級を目安にする行が多いと言われます
- 転職で差がつくのは証券アナリスト・FP1級・中小企業診断士・宅建。銀行業務検定は社内向けと割り切るのが現実的です

銀行員の資格ロードマップ(年次別)
まず、この記事で紹介する12の資格を「いつ取るか」で整理します。
| 時期 | 取る資格 | ねらい |
|---|---|---|
| 入行前〜1年目 | 証券外務員(一種)/生命保険・損害保険募集人/普通自動車免許 | 窓口・渉外の必須。内定後〜入行直後に一括で |
| 1〜3年目 | 銀行業務検定(法務3級・財務3級・税務3級→2級)/内部管理責任者/日商簿記2級/FP2級 | 融資・決算書・税務の基礎。個人渉外はFP2級が実質必須 |
| 3〜5年目 | FP1級・CFP/プライベートバンカー(PB)/宅建(不動産・住宅ローン担当) | 富裕層・相続・不動産の専門性 |
| 5年目〜 | 証券アナリスト(CMA)/中小企業診断士/不動産鑑定士 | 本店・専門部署、または転職市場での差別化 |
※ 順序は一般的な目安で、行・部署により前後します。
銀行員が取得必須の資格5選
はじめに、銀行員が取得必須の資格を5つお伝えします。
【銀行員が取得必須の資格】
- 証券外務員
- 生命保険・損害保険募集人資格
- 銀行業務検定
- 内部管理責任
- 普通自動車免許
それぞれ見ていきましょう。
証券外務員
証券外務員とは、日本証券業協会が主催する資格試験で、銀行や証券会社などの金融機関で、顧客に対し金融商品の販売や勧誘を行うのに必要な資格です。
預金や国債、投資信託などが銀行が取扱う金融商品に該当するので、この資格は銀行員にとっては必須です。
この資格がないと銀行員としての仕事ができないので、新卒の場合は証券外務員2種を入行前に受験するのが一般的です。銀行員の基本となる資格なので、絶対合格しなければというプレッシャーがかかります。
2種より難易度が上がり、取扱いできる金融商品が広がる1種は、入行してから数年後に取得する人が多いです。
証券外務員の試験情報や勉強法についてはこちらの記事をご参照ください。


生命保険・損害保険募集人資格
生命保険募集人資格は、社団法人生命保険協会が主催する資格試験で、生命保険を販売する為に必要な資格です。銀行でも保険商品の取扱いがあるので、取得必須となります。
一般課程試験、専門課程試験、変額保険販売資格試験、応用課程試験、大学課程試験、外貨建保険販売資格試験などに分かれていますが、銀行員は入行するとまず、一般課程試験を受験します。
また、損害保険募集人資格は、日本損保保険協会が主催する資格試験で、損害保険を販売する為に必要な資格です。生命保険募集人資格と同様、銀行員はまず一般課程試験を受験します。
生命保険・損害保険募集人資格は、数ある資格試験の中でも難易度が低く、落ちてしまうと行内で噂になってしまうほどです(恐怖)
銀行業務検定
銀行業務検定は、銀行業務検定協会が主催する資格試験で、銀行業務知識・技能などの習得度を測ることが目的です。
23系統36種目の試験が実施されていますが、銀行員が受けるのは主に、法務、財務、税務で、それぞれの2級と3級を受験する人が多いです。
業務において必要というよりは昇格・昇給していく為に必要な資格で、「法務2級、財務2級、税務2級のうち、どれか2つに合格していないと、課長にはなれない」などと人事ルールが決まっていることが多いです。
実際に、年次や実績では課長になれるのに、この資格試験に合格していなかったので、課長への昇格が先送りになってしまった人もいました。
銀行員の中では「昇格のために仕方なく取る資格」というイメージですが、どの科目もきちんと勉強すれば、実際の業務に活かせる知識が多いのも事実です。
内部管理責任者
内部管理責任者は、日本証券業協会が主催する資格試験で、管理職を目指す人が取得します。
銀行では、各支店における投資信託などの金融商品の取引に関して法令違反がないかなどをチェックする役割を担い、「内管(ないかん)」と呼ばれます。
金融商品を扱う支店であれば、内部管理責任者が必要となり、メガバンクの場合は副支店長がその職務を担うケースが多いです。
実際には、管理職に上がる前のタイミングで受験することになります。
普通自動車免許
言わずと知れた普通自動車免許ですが、銀行員には必須となります。
メガバンクの場合全国に支店があるので、いつ地方の支店に配属されるか分かりません。地方の支店では営業車でお客さまを訪問するのが当たり前なので、自動車免許がないと困ってしまいます。
最初の頃は、先輩が助手席に乗せてくれ、運転の練習もさせて貰えるので、その点は安心です。
配属先が都会の支店の場合は業務中に運転する機会はほぼありませんが、土日にゴルフに誘われることも多く若手がレンタカーを運転して行くことになるので、入行前に取得しておきましょう。
銀行員が取得する有利な資格7選
次に、銀行員が取得すると有利な資格を7つご紹介します。
【銀行員が取得する有利な資格7選】
- 日商簿記
- ファイナンシャル・プランナー
- プライベート・バンカー
- 証券アナリスト
- 宅地建物取引士
- 不動産鑑定士
- 中小企業診断士
日商簿記
日商簿記は、日本商工会議所が実施する資格試験です。簿記の知識があると財務諸表が読めるようになり、経営分析もできるようになります。
銀行が融資をする際には企業の財務状況を判断する為、財務諸表を読み取る力が必要となるので、簿記の知識を活かすことができます。
これから銀行員を目指す人はまず3級取得がおすすめですが、銀行員になってからは、2級以上を目指す人が多いですね。

ファイナンシャル・プランナー
ファイナンシャル・プランナーとは、日本FP協会が実施する資格試験で、家計管理や、教育資金、年金、資産運用、保険、相続などの知識を備え、相談者にアドバイスできるようにするものです。
銀行員の中でも特にリテール営業(=個人営業)の担当者が、積極的に受験します。難易度が上がる2級以上を取得していると、行内でも一目置かれることになります。
また、銀行員になる前でも受験可能な資格なので、リテール営業を目指す人は3級を取得しておくと就職活動でもアピールしやすいです。

プライベート・バンカー
プライベート・バンカーとは、日本証券アナリスト協会が実施する資格試験で、富裕層を対象に、事業継承や不動産投資、相続対策などをアドバイスするスペシャリストを目指すものです。
こちらもリテール営業の担当者に人気があります。
最近では、銀行も証券会社も富裕層ビジネスに注力しているので、まさに時流に合った資格と言えます。


証券アナリスト
証券アナリストとは、日本証券アナリスト協会が実施する資格試験です。
高度な財務知識と市場分析力を用いて、投資アドバイスなどを行うスペシャリストを目指します。
銀行員の中でも、本部の市場調査部門や投資部門を目指す人が、アピールの為に取得することが多い資格です。


宅地建物取引士
宅地建物取引士(宅建)は、不動産取引の国家資格ですが、銀行員にも役に立つ場面が非常に多い資格です。
具体的には、不動産を担保に取るケースです。不動産評価をする時に、宅地建物取引士の資格があると頼りにされることが多いです。
また、合格すると支店でかなり話題になりますし、上司にも好印象です。宅建を取得すると基本給が上がるなど、給与面でもメリットを受けられます。

不動産鑑定士
不動産鑑定士は、土地や建物の鑑定を行うことができる国家資格です。
宅地建物取引士と同様に、不動産の評価をする時に、非常に役に立ちます。
宅地建物取引士よりも難易度が高く取得までには数年を要しますが、不動産取引のスペシャリストとしての地位を築くことができます。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営コンサルティングに関する国家資格です。中小企業の経営状態を診断し、それに対する助言を行うという点から銀行員にも有益な資格です。
難易度が高いので、合格すると名刺に「中小企業診断士」の肩書きが追加され、昇格・昇給にも繋がりやすいです。
メガバンクで勤務していた頃は「同期に差をつけたい」と、合格に向けて勉強している人がいました。
昇格・出世と資格の関係
- 各行が「昇格には◯◯が必須」と公式に公表しているケースはほとんど見当たりません。ただし転職エージェント各社の解説では、銀行業務検定の特定科目・内部管理責任者・FP2級を昇格や職位の要件にしている銀行があるとされ、筆者の経験とも一致します
- 受験者数を見ると、銀行業務検定は法務3級 約5,000人・財務2級 約2,800人・税務3級 約2,500人・法務2級 約1,800人が1回の試験(2024年10月)で受験し、累計申込は1,179万人(2025年6月時点、銀行業務検定協会)。若手行員がほぼ全員通る試験である実態が数字からも分かります
- 一方でFP技能検定(日本FP協会実施分)の合格者は2022年度13.4万人→2024年度9.6万人と減少傾向。資格「数」を競う時代から、業務に直結する資格を選ぶ時代に移りつつあります
- 出世に直結するのは資格そのものより「目標達成・大きなミスをしない・大口顧客の支持」(→ 地銀の学歴とエリートコース)で、資格は「配属・専門職の切符」と考えるのが実態に近いでしょう
転職に効く資格・効かない資格
- 効く:証券アナリスト(CMA、2025年春試験 1次48.4%・2次44.4%)は証券・運用・M&Aへの転職で高評価。FP1級・CFPは富裕層・相続・保険領域、宅建は不動産・住宅ローン領域、中小企業診断士は事業再生・コンサル領域で「実務経験+資格」として効きます。地銀は事業再生人材の確保を急いでおり(ニッキン2025年4月)、この領域は追い風です
- 効きにくい:銀行業務検定・内部管理責任者は銀行内の共通言語で、社外では評価対象になりにくい。「資格を持っている」より「何を担当して何の実績があるか」が前提です
- 銀行から証券・IFA・運用会社への転職では、外務員一種は前提資格、CMAとFP1級が加点要素です(→ 金融業界に強い転職エージェント比較6選【2026年版】)
よくある質問
Q. 銀行員が最初に取る資格は?
証券外務員(一種)と生命保険・損害保険募集人。内定後に取っておくと入行後が楽です。
Q. 銀行員にFPは必要?
個人渉外・資産運用担当なら実質必須。2級が目安で、富裕層担当はFP1級/CFPまで求められることがあります。
Q. 昇格に必要な資格は?
行によりますが、銀行業務検定の特定科目・内部管理責任者・FP2級を要件にする行があると言われます。公式に公表している行は少ないので、人事に確認するのが確実です。
Q. 転職で評価される資格は?
証券アナリスト・FP1級・中小企業診断士・宅建など。資格より実績が前提で、銀行業務検定は社外評価につながりにくいです。
最後に
ここまで銀行員に必須・有利な資格をお伝えしました。
銀行員になると、次から次へと試験を受けることになります。それに加えて、2週間に一度、通信教育テストも提出しなくてはならない時期もあります。
銀行員は勉強ばかりですが、その分知識が身につくので、どんどんやりがいのある仕事ができるようになります。
業務で忙しときに資格勉強に追われるのはつらいですが、実務に役立つ知識も多いので、やりがいを持って勉強に臨みましょう(無理は禁物ですよ!)

