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【PB】シニアPBの難易度と投資政策書の対策方法

数ある金融系資格の中でも、トップクラスに難しいと言われているシニアPB。

今回はそんなプラベートバンカー資格の最高位である、シニアPBの難易度と対策方法についてお伝えします。

シニアPBとは

シニアPBとは、証券アナリスト協会が運営しているプライベートバンカー資格の最難関資格試験です。

金融機関にあたっては、プライベートバンキング部門の管理職ないしリーダーとして活躍することを想定しています。また、税理士や公認会計士あるいはFPの方々が実践的なノウハウを磨いていくのにも効果的でしょう

引用元:日本証券アナリスト協会

金融営業に必要な知識が体系的に学習できる資格として、金融業界を中心に注目されています。

シニアPBの難易度

次に、シニアPBの難易度を見ていきましょう。今回は次の観点からシニアPBの難易度を測っています。

  • 合格率
  • 試験制度
  • 受験者層

合格率でみる難易度

シニアPBに限らず、一般的に資格試験の難易度を測るときには合格率が参考になります。

受験者数合格者数合格率
2021年春試験942021.3%
前年同期1133531.0%

日本証券アナリスト協会が公表しているデータを参考にすると、シニアPBの合格率は20~30%ほどだと分かります。

合格率が60%以上あったプライマリーPBと比較すると、一気に難易度が上昇していることが分かります。

合格率だけでみると、難易度としては十分難しい分類に入る資格試験だと思います。

試験形式でみる難易度

シニアPBの試験形式は独特です。

選択肢式の問題が出題されるのではなく、一つの富裕層ファミリーの課題を発見しソリューションをレポート形式で提出する試験です。

画質が悪くて申し訳ないですが、上の画像のようなレポートを作成し、投資政策書をとして提出します。

要点だけを対策すれば突破できたこれまでの試験とは異なり、学習内容の本質的な理解が求められます。

作成期間は1ヶ月与えられていますが、高いレベルの科目横断的な知識と資料作成能力が要求されていることを考えると、時間は足りないと感じるはずです。

試験形式から見ても、シニアPBの難易度は高いと判断できます。

受験者層でみる難易度

どのような方々が受験しているかによっても難易度を測ることができます。

同じ合格率でも、学生が主な受験者層か、業界人が主な受験者層かで実態の難易度は大きく異なります。

結論、シニアPBは後者であり、主な受験者層としては「銀行・信託銀行」「証券会社」「保険会社」に在籍している方々です。

出典:日本証券アナリスト協会|試験データ(データは2022年6月末時点)

シニアPB合格者の所属企業ランキングを見てみると、三菱UFJ銀行や三井住友銀行などのメガバンクや、野村證券やみずほ証券など大手証券会社が上位であることが分かります。

つまり、高学歴や実力者が多い有名金融機関の方が受験しても、半分以上が落ちる試験とも解釈できます。

これだけみても、資格試験として十分難易度が高いと判断できると思います。

シニアPBの対策

次に、シニアPB対策のポイントをお伝えします。

試験のポイント

シニアPB対策で重要なポイントは次の2点です。

【シニアPB対策のポイント】

  • 試験対策=投資政策書対策だと認識する
  • 正解は一つではないが限られていることを認識する

まず大前提として、シニアPBの勉強=投資政策書対策です。

投資政策書は、顧客(課題上の想定顧客)の悩みや不安を解決するソリューションをまとめたレポートのようなものです。実際に協会でも次のような記載があります。

顧客ファミリー全体が目指す最終的なゴール達成のために、<情報収集⇒現状分析⇒対策案の検討⇒モニタリング>の手順で全体を見渡した結果、顧客ファミリー全体に最も相応しいと思われる解決策を助言するための提案書となります。

引用元:日本証券アナリスト協会

つまり、いくらテキストでインプットを積み重ねても、ソリューションを提案書として提示する技術がなければ合格できないんです。

そして、協会の投資政策書作成ガイドには次のような記載があります。

企業オーナーや資産家層のファミリーの場合には複雑な事情が絡み合っていることが多いため、それらをいかに解決していくかとなれば、書き手の論理構成・分析手法によって、さまざまな提案内容となり得ます。

引用元:日本証券アナリスト協会

このような記載があると、提案できる内容は千差万別のように思えます。それ故ありとあらゆる参考書に手を出す人が多いのでしょう。

しかし、今一度富裕層のニーズを考えてみてください。富裕層の2大ニーズは”節税”及び”事業承継”です。これはPBコーディネーターのテキストにも記載されてたはずです。

税金の種類にもよりますが、”節税”対策として提案できるのは金融商品や不動産になります。そして”事業承継”は専ら保有株式の移転等に関する内容です。

もちろん保険商品や信託についても触れておくべきでしょうが、富裕層が抱えるニーズの特性を考慮すれば、おのずと何を勉強すればいいかは見えてきます。

故に投資政策書の作成方法は一つでありませんが、提案するソリューションは限られてくるということです。

勉強法:インプット編

過去問を用いた勉強法がベストでしょうが、それはできません。協会が問題の公開を禁止しているからです。

ですがサンプルをみても分かるように、課題は主に次のような形になります。

会社からの引退を考えています。後継者選びや資産配分が心配なんですが、どのような方法がありますか?家族内での揉め事や税金への対策が施された最善な方法を教えて欲しいです。

どんな問題も、要点は上記のようなメッセージになります(多分)

ここで、上記の富裕層のニーズを分解してみましょう。勉強の糸口が見えてくるはずです。

【富裕層の主なニーズ】

  1. 事業承継
  2. 節税
  3. 資産配分

何をインプットすればいいのか分かったら、次はこれらの知識をアウトプットしていく必要があります。

勉強法:アウトプット編

テキスト等で必要なインプットができたら、今度はアウトプットして投資政策書の書き方を学んでいきましょう。

プライベートバンキング実務の経験がないと、投資政策書の書き方なんて想像もつかないでしょう。しかしご安心を。

日本証券アナリスト協会では投資政策書の過去問を非公表にしています。アナリスト会員になっていないと確認できないので、ここでは概要だけお伝えしますね。

【投資政策書の書き方】

  1. サマリー(提案要旨)
  2. FMS(ファミリーミッション)
  3. 現状分析
  4. 解決すべき課題の発見
  5. 対応策と複数手段の検討
  6. 金融資産運用の提案
  7. リスクとモニタリング・フォロー方法
  8. その他計算資料

さらに重点的に学習する必要があるのは次の3つです。

  • 現状分析
  • 課題の発見
  • 対応策の検討

なぜこの3点が重要かというと、他の部分は概ね差が出ないからです。

それに対して、どう現状分析をするのか、何を問題だと解釈するのか、そしてどのような対応策をとるのかは、人によって力量が異なるところです。

以下の表に上記3点の主な内容を記載しました。是非ご活用ください。

①現状分析②問題点③対策
法人の概況経営環境、業界分析、資金繰りVCからの出資、リースの活用
後継者候補の概況候補、承継計画の有無・進捗状況事業承継策の選択、資産管理会社の活用
持分の評価評価方法如何種類株式の活用
メンバーの概況個々に抱える問題点FMSの実現
資産の概況収入支出の状況、資産内容の分析金融資産運用の提案、小規模宅地の特例活用
相続の概況遺言者の有無、納税資金の準備遺言の活用、信託の活用

どんな課題でも現状分析、問題点、そして対応策は上記の内容になっていきます。

そのため、適切に対応策を提案できるノウハウと知識があれば、あとは問題点を正しく認識するだけです。

おすすめのテキスト

それではこれからシニアPB試験対策に有用なテキストをご紹介します。

しかしその前に、プライマリーPBとシニアPBとで必要な知識の差を伝えておきます。FP2級やプライマリーPBを取得した方がシニアPBを目指す場合は、次の内容を優先的に学習されることをおすすめします。

【シニアPBから必要な知識】

  • 事業承継における種類株式の活用と計算
  • 社長家族及びステークホルダーとの利害調整方法
  • 節税や投資先としての不動産・保険商品の活用と計算
  • 相続・贈与の計算

そして、テキストを紹介するにあたって、次のような前提を置かせていただきます。

  • プライマリーPBレベルの知識は備わっている
  • 富裕層ビジネスのイメージができる

それでは、具体的にテキストをご紹介します。

【シニアPB対策に役立つテキスト】

  • 『Q&A 中小・零細企業のための事業承継戦略と実践的活用スキーム』
  • 『信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ』
  • 『不動産相続の教科書』
  • 『顧客のための総合提案書の作り方』

『Q&A 中小・零細企業のための事業承継戦略と実践的活用スキーム』は、日本証券アナリスト協会が推薦している教材です。協会推薦だけあって、シニアPBに必要な知識が詰まってます。

投資政策書作成において必ず考えるであろう事業承継対策、自社株の評価法などについて事例を交えて教えてくれます。シニアPB受験者のバイブルとなっていますね。

「事業承継において企業オーナーが立ち向かう問題はなんなのか?」
「その問題に対してどのような対策が有効なのか?」

このような試験突破に必要不可欠な必要な知識を提供してくれます。最初の1冊のとして取り組むべきテキストです!

『信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ』では、タイトル通り信託を活用した相続対策を学習できます。

信託の基本構造を学習できることはもちろん、評価上の注意点や事業承継税制との関連を実務的な観点から解説している良本です。

事業承継問題がメインテーマとなってくるシニアPBでは、信託と絡めてソリューション提案を行うことが少なくありません。実務の世界では信託の活用は広がっています。

資産承継及び事業承継対策として近年注目が集まっている信託を、1からシニアPBレベルまで学ぶにはこの1冊で良いでしょう。

『不動産相続の教科書』は、相続対策においての不動産活用方法について記載された貴重なテキストです。まさにシニアPB試験向けに書かれたとも言えるのが本書です。

不動産相続と事業承継に焦点が当てられており、その中で不動産をどのように活用するのか、戦略的な節税方法をケーススタディを取り入れながら説明してくれます。

企業オーナーの個人資産の多くを占める株式については『信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ』で、その次に大きい不動産については同書で対策できます。

そして最後に、提案書自体を書き慣れたことがない方向けに、『顧客のための総合提案書の作り方』をおすすめしておきます。

私は活用していないですが、協会が公式におすすめの教材として公表しているので、提案書を作る上でのポイントや知識が詰まっているはずです。

シニアPB受験の反省点

次に、私にシニアPB受験の反省点をお伝えします。

参考になるかは分かりませんが、反面教師としてご活用いただければ幸いです。

科目横断的な知識がなかった

シニアPBでは一つの分野に特化した知識より、分野横断的な知識が必要です。狭く深い知識ではなく、広く深い知識が必要です。

私は証券会社で勤務していたこともあり、金融商品についてはある程度知識があったのですが、不動産や信託についてはほとんど無知でした。

1から学習せざるを得なく、無駄に時間を取られてしまいましたね

資料作成力が不足していた

投資政策書は、大学の論文のようにレポートで提出します。

ポートフォリオや節税効果を視覚的に分かりやすくするためには、グラフを用いることが必要不可欠です。

私はExcelが全くできませんので、ここでも無駄な時間を取られてしまいました。

最後におすすめした『顧客のための総合提案』を素直に活用していれば、よりスムーズに対策できていたかもしれません。

まとめ

今回はシニアPBの難易度と勉強法についてお伝えしました。

シニアPBはまだまだ認知されていない資格ですが、金融業界が注力している富裕層ビジネスに必要な知識を体系的に学習できる有意義な資格です。

金融営業を極めたい方は、シニアPBに挑戦してみてはいかがでしょうか。

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  • 執筆者のプロフィール
MY OPTION編集部

資産×キャリア形成メディア「MY OPTION」編集部です。 大手証券会社、総合商社、メガバンク出身者などで構成されています。

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